滋賀医療人育成協力機構
2011年11月4日
夏のワークショップ2011を長浜市内のホテルにて開催しました。
8月27日(土)
毎年7月から8月にかけて滋賀県出身自治医科大学同窓会「さざなみ会」・地域包括ケアセンターいぶきの共催で、「医学生のための地域医療プログラム」が実施されます。
今年は、NPO法人滋賀医療人育成協力機構のはじめての事業として、お手伝いをさせていただきました。
このプログラムは、滋賀県出身自治医科大学同窓会「さざなみ会」と地域包括ケアセンターいぶきが企画され、本機構は全体報告会場費の一部負担と、参加学生の交通費の一部補助をさせていただきました。
●「医学生のための地域医療プログラム」とは、
●全体報告会・懇親会(8月27日・長浜ロイヤルホテル)
実習報告では、体験学習を行った学生から、実習を通して気づいたこと、感じたこと、得られた学びや受けたアドバイスなどについて発表があり、その後学生を受け入れた診療所の先生からのコメントや、会場からの質問などを通して自身の学びを振り返っていました。
全体報告会のみ参加の滋賀医科大学の学生さんからは、自身で行なった地域医療に関する研究についての発表があり、会場の医師から良い評価を受けていました。
特別講演として、フォトジャーナリストの國森康弘さんの講演では、「トイレの神様」の曲に併せて写し出される、ごく自然な家庭での介護の様子と家族の方の病人へのかかわり方、そしてその中での医師の役目、写真と曲を通しての訴えに涙が止まりませんでした。
懇親会では学生同士の交流、学生達と地域の医師や職員との交流が和やかに行われました。
学生たちも他の医科大学の学生とふれあうという体験に、よい刺激を受けることができたと満足そうに帰途につきました。
さざなみ会会長 花戸貴司先生、地域ケアセンターいぶき 畑野秀樹先生のご厚意により、先生方がまとめて下さいましたセミナーに関する感想と、学生アンケートを掲載させていただきます。
夏のワークショップ 2011
We are the doctors who specialize in you! (私たちは家庭医です)
2011.8.27 長浜ロイヤルホテル
主催 滋賀県出身自治医大同窓会「さざなみ会」
NPO法人 滋賀医療人育成協力機構
地域包括ケアセンターいぶき
皆さんは、医師を志したときどのような理想の医師像を描いていたでしょうか?内科医、外科医、小児科医、などなど様々な科の医師をイメージしていたかもしれません。しかし、上記のような専門科としての姿のほかに、大学には大学の、病院には病院の医師の姿があり、地域住民の最も身近な診療所には診療所の医師の姿があります。つまり、専門科として以外にも、働く場所によってそれぞれの役割を担っている医師の姿です。普段、大学病院などの大病院では、みることのできない医師の活動を皆さんはご存知ですか?
滋賀県出身の自治医大卒業生は、滋賀県の各地域に散らばっていますが、私たちはそれぞれの地域に誇りを持ち、地域の人たちに対して何ができるのか(あるいは何ができないのか)、日々地域の人たちと向き合いながら考えています。つまり、みているのは患者さんの病気だけではなく、その人の家族のこと、地域の人たちとのつながり、そしてその人の人生観までトータルにみるように心がけています。まさに家族全員、地域の皆さんとお互いに繋がっている、それが「家庭医」なのです。しかし、私たちが皆さんに滋賀県の地域医療を伝えることを怠ってきたのも残念ながら事実です。
今回、私たちは滋賀県の各地域で働いている医師がどのような活動を行っているのかを医学生の皆さんに知ってもらおうと、ワークショップを企画しました。今回のワークショップは、たくさん勉強をして知識を詰め込むようなワークショップではありません。どちらかというとたくさんのことを経験してもらうワークショップ、つまり、滋賀県の地域で働く医師がどのような活動をしているかを体験してもらうことが一番の目的です。その結果、今まで大学病院だけでは、なかなかイメージすることのできなかった「家庭医」という医師像を少しでも具体化することができれば幸いに思います。
滋賀県出身自治医大同窓会「さざなみ会」会長
東近江市永源寺診療所
所長 花戸 貴司
花戸先生から開会の言葉 自治医大、滋賀医大の学生さんと
地域の医師
あいとう診療所での実習報告 ケアセンターいぶきでの実習報告
石部医療センターでの実習報告 竜王診療所での実習報告
永源寺診療所での実習報告 湖東診療所での実習報告
家庭医についての調査報告 家庭医後期研修プログラム
(学生さん) について雨森先生
フォトジャーナリスト 長浜の夏の日は暮れていきました
國森康弘さんによる講演
懇親会はそれぞれの意見交換に どのような医師になるのか
学生さんの希望や不安も 滋賀の地域医療を
受け入れて 担ってくれる日を期待し
ワークショップは、学生さんの夏期実習(診療所など医療機関での実習を踏まえてレポートしてもらいました)についての報告を、それぞれしてもらいました。学年によっても感じることは異なるようです。また特別講演として、フォトジャーナリストの國森康弘さんに、東日本大震災の現場の写真、アフリカなど世界の紛争地の写真、そして滋賀県内で在宅で過ごし亡くなっていく人の写真を提示しながら、幸せな死に方(生き方)、あるいは良い死(良い生き方)について、医師とは異なる視点から話をしていただきました。
医学生さんにとって、医学についての哲学を深めることはもちろんですし、先端医療について学ぶことは大切なことです。「病気」に向かうとともに「人」に寄り添いながら医療を提供できる温かい医師に育っていただけるよう、このワークショップは皆さんの心に響いたのではないでしょうか?
夏のワークショップ2011アンケートまとめ
◎医療機関での実習
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今回、僕は初めての研修をさせていただきました。有意義な時間を過ごすことができ学ぶことも多かったと思います。(1年)
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地域医療の現場を見たのは初めてでしたが、医師や看護師の方と地元の方々とのつながりが強いのだということを感じました。畑野先生は、患者さん一人一人の話をよく聞くために、時間が制限されないよう予約はとられていなかったことがすごいと思いました。(1年)
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思っていた以上に、丁寧に親切にご指導いただきとてもよかった。上から目線でない先生方がたくさんおられてとても心強く思った。他の催しで、上から目線の先生にも会ったので、差がはっきりした。(1年)
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診療の合間に様々なことを丁寧に教えていただいてよかった。大学での勉強の意欲をかきたてられた。(2年)
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今年も非常に整った環境で学ばせていただきました。まだ実習が始まっていない身なので、今回多くの主義を学ばせてもらい勉強になりました。自分の将来の医師像に近いものを間近で見られて本当に良い経験でした。(3年)
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今回の実習では、系統講義を習っており、色々な病気などがわかるのではないかと思って挑んだのですが、分からないことのほうが多く勉強不足を身をもって感じました。今回で3度目の実習で、医師の方によって診療の雰囲気などが変わるということを実感しました。(3年)
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4度目の実習でしたが、また新たに考えることがいろいろありました。土地の住民を熟知されている看護師さんたちのお話を聴かせていただき、往診なども含め、直接現場を見させていただき、医療者と患者さんの距離感の近さも身をもって感じられました。(4年)
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滋賀の医療機関は本当に地域に密着しており、その場所によって大きくスタイルは異なると感じました。しかし、患者さん一人一人について丁寧に接していこうというスタンスはとても勉強になり、また自分の理想でもあるので、ぜひ来年もよろしくお願いします。(4年)
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今回の実習では大学病院での実習では経験できないような健康教室や学会などを経験できたので、とても有意義でした。また、市長さんとの面会というとても貴重な時間を過ごせてとても光栄でした。(4年)
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将来、とても役に立つ良い経験だと思います。ご指導いただいた先生やスタッフの皆様に心より感謝しています。(5年)
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今回は、あいとう診療所で研修させていただき、地域医療の第一線を身近に感じることができました。特に往診では地域ぐるみの医療があり、近所の人もあっての医療だと再確認できました。(5年)
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皆が言葉ではなく、体験として地域医療・家庭医のエッセンスを学びとっていたことが印象的でした。(医師)
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二人での研修を行う場合、下級生にも十分感想・意見を述べる時間をもってほしい(医師)
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3年目から地域中核病院に勤務しているが、自分が日々の診療にいっぱいいっぱいになっていることに気づいた。学生の発表を聞いて自分が学生のときに感じた地域医療への思いを思い出すことができた。医療だけでない地域で学ぶことも大事だということを改めて感じた。(医師)
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学生さんのプレゼンテーションの上手さにびっくりしました。地域医療に対しての感受性の豊かさは素晴らしいと思いました。(医師)
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初心を思い出させるような発表ばかりで、本当に刺激になりました。毎年一泊二日間研修を行って、それについて発表するという場をこれからもずっと続けていくべきだと感じました。(医師)
◎國森康弘さんの講演
- 医療者とは違った視点から地域医療を見るということで、良い講演を聴かせていただきました。(1年)
- 在宅医療の家族や患者さんの心持ちが伝わる写真だった。ただ、質問にもあったが、キレイすぎるのかなあとも思った。→あとから、その(写真)のとおりだということを聞き、やはり地域医療の大切さを思った。(1年)
- 今までのイメージでは死とは苦しいものや辛いものでしかないと考えていました。講演の前半に見せていただいた震災の写真などではそのような苦しい思いがあったと思います。それでも看取りの写真では、ご家族の方が笑顔だったので驚くと同時に畑野先生の「死とは敗北ではない」という言葉を思い出しました。(1年)
- 地域医療の現場を非常に印象的に切り取られ、その魅力を強く感じることのできる写真ばかりで感動した。多くの人が幸福な最期を迎えられるような、そんなお手伝いができる医師になりたいと思った。(2年)
- 医師でない視点からの考え方がよく伝わってきて、非常に良かったと思います。いつも医師同士、医療関係者同士での意見交換が多いので、かなり新鮮でかなり印象的でした。(3年)
- 自治医大で行われる夏期実習は毎年二日間で短い実習なので見られないことのほうが多くて、その一つである看取りをありのままの形で見ることができて、かなり勉強になりました。(3年)
- 医師と患者さん、あるいは地域とのつながりだけでなく、その地域での家族間や近所など様々な人と人とのつながりを見直すことができました。医療も、もっと「人間」という見方を重視していきたいと思います。色々と見直すことのできる非常に良い機会となりました。(4年)
- 最近、死について考えさせられることが多いです。7月に亡くした祖母の最期のときや夏季研修や今日の写真。貴重な機会をありがとうございました。写真、きれいでした。(4年)
- 在宅での看取りの写真ですが、家族に囲まれてなくなっていく方々はとても幸せそうに思えました。私の祖父も自宅で看取ってあげたかったと思いました。(4年)
- とても感動的で素晴らしかったです。自分の原点に立ち返ることができたように思います。本当にありがとうございます。(5年)
- 選べない死と在宅の最期とのコントラストなど、簡単に腑に落ちないほど、小さくない深いものを感じさせていただいて感想の言葉も書けないのですが、家族や地域を表で裏で支えられる家庭医の姿を自分の将来像として感じることができました。ありがとうございました。(5年)
- 今回の実習で、畑野先生の「住み慣れた家で最期を迎えたいという願いをかなえるために」という題の講演を聴く機会がありました。その時にも死というものは敗北ではなく、次の世代に命の大切さを伝える貴重な機会だという話を聞きました。研修中に往診患者さんの最期に立ち会う貴重な機会もあり、さらに多くの患者さんの最期を取材された國森さんの講演を聴くことで、写真によるより鮮明な表現で心に伝わってくる命の大切さ、それが次の世代で受け継がれていく様子を見ました。とても大切なものを得られる講演でした。
- 感動して、元気がでました(医師)
- 「トイレの神様」にあわせたスライドショーは、普段臨終の場合で涙ぐむことのない私にとっても、目頭の熱くなるものでした。ましてや、若い感受性のある医学生の皆さんにも、十分地域医療の大切さ、醍醐味が理解できたのではないかと思います。ありがとうございました。(医師)
- これまで出会ってきた多くの患者さんの顔を思い浮かべながらみてました。訪問で感じていた家族のあたたかさなどを写真としてしっかり残していただけているのが、とてもうれしかった。是非、社会にこの写真から伝わる家庭の良さ、そこに在宅医療が大きくかかわれることを伝えてほしい。(医師)
- 患者さんやご家族の表情が豊かだったことが印象的でした。患者さん、ご家族だけでなく支える周囲のスタッフ・ドクターも生き生きしていた。(医師)
- 医師でもない、僧でもない國森さんが命を語っている姿は、「医師だから」わかるものではなく、「にんげん」として通じるものは同じだと感じました。「命のバトンは」通じる。すごくよい勉強の機会となりました。(医師)
- 今まで大学の授業などで在宅について勉強したことはあったが、今回ほど鮮明で考えさせられる授業はなかったと思います。自治医大の授業でおこなってもよいかと思うほど、素晴らしかったと思います。(医師)
◎全体の感想
- 今日のワークショップに参加して非常に良かったと感じています。ありがとうございます。(1年)
- 他に実習に参加された方々の報告を聞けてよかった。実習に参加させていただいた医療機関以外の先生方にお目にかかれてよかった。(1年)
- 自治医大の方々の話の他にも滋賀医大の方や写真家の話を聞くことができ、今後のモチベーションにつながる良い機会でした。これからもワークショップを続けてほしいと思います。(1年)
- 他の場所で研修した人の発表や他大学の学生の発表、先生方のお話を聞けて大変刺激を受けた。講演も医師とは違う切り口、視点からのもので貴重なお話が聞けたなと思う。(2年)
- 今年も多くのことを学ばせていただきました。地域医療や家庭医といったことをよく知らない人、興味のうすい人にも、もっと参加してほしいと思いました。(3年)
- 今回のワークショップでは、國森さんの話や滋賀医大の方々の話が聞けて、かなり刺激になりました。(3年)
- 同じ「地域医療」でも各地域、診療所で共通な点、違う点など、見直すことができました。また、同じものを見ていても色々な人の話を聴き、異なった意見、自分よりもはるかに深い考えなども聞くことができました。(4年)
- 滋賀医大の方々や國森さんの写真など刺激をたくさんうけました。今後も積極的に参加したいと思います。個人的に実習報告はもっと煮詰めてやりたかったと感じます。(4年)
- 自分の研修報告に対して、先生方からたくさんの意見をいただいてとても良い刺激になりました。もっと滋賀医大の学生も参加してもらいたいです。(4年)
- とても良いワークショップだと思います。できることなら他大学の方にもたくさん参加していただけたらなと思います。(5年)
- 幅広い講師設定がとても面白かったです。ありがとうございました。(5年)
- 國森さんの講演は本当にためになるものでした。これからもぜひワークショップだけでなく、入試の場などでも語っていただきたいと思います。(5年)
- 今回も楽しかったです。地域医療の楽しさ、素晴らしさを伝えていきましょう。(医師)
- 今回、初めて参加しましたが、できれば滋賀医大の学生さんにもう少し参加してもらい、意見を聞いてみたいです。今後もさらに発展することをお祈りします。(医師)
- 滋賀医大学生が減っているのが今後の課題でしょうか。自治の学生が「強制感」を持たないように気を付ける必要もありそうです。(医師)
- また参加したい。(医師)
- 滋賀医大生がもう少し多いといいなと思いましたが、人数的には今ぐらい20-40人位がよさそう。(医師)
- 病院勤務を始めて4か月ぐらいですが、初心を思い出すことができ、勉強になりました。ありがとうございました。(医師)
最後になりましたが滋賀県庁、滋賀県国保連合会、NPO法人 滋賀医療人育成協力機構、公益社団法人地域医療振興協会から今回のワークショップ開催にあたり御協力いただけたことに深く感謝しております。とりわけ地域包括ケアセンターいぶきの清水事務長さん、NPO滋賀医療人育成機構の中森さん、呉竹さんには、会場の確保からワークショップの案内まで御尽力をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。