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1月13日に第7回「卒業後の自分を考える」連続自主講座を開催しました。

2016年2月8日

 小児科領域のお話を聞きたいという要望により、1月13日に滋賀医科大学クリエイティブモチベーションセンターにおいて講師に、阪上 由子医師(滋賀医科大学小児発達支援学講座・特任助教、滋賀医科大医学科19期生)、中村 美智 看護師(滋賀医科大学医学部附属病院看護部NICU/ GCU 6年目看護師、滋賀県立総合保健専門学校卒業)、西澤 嘉四郎 医師(近江八幡市立総合医療センター副院長、滋賀医科大学医学科3期生)をお迎えし、お話を聞かせていただきました。

 阪上由子先生からは、子どもたちの命と健康を支える「メンタルヘルス」を中心にお話いただきました。

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  • 我が国の児童・思春期をめぐる精神保健の歴史は、戦後の戦災孤児の養護から始まり、発達障害、虐待へとトピックスが変化していて、発達外来の診察では、虐待症例などの事例検討会等、関係機関との連携を要するケースが年々増えています。
  • 小児科では「成長+発達=発育」という視点で子どもの発育を評価していますが、神経発達障害 (Neurodevelopmental disorder)の多くは学童期以前に出現し、通常の発達と異なり、社会性・対人相互交流性コミュニケーションの課題をもつASD(自閉症スペクトラム障害)、不注意や多動衝動性が顕著なADHD(注意欠如多動性障害)、読み・書き・計算などの学習スキルに課題をもつLD(学習障害)などが含まれます。神経発達障害の診療においては、福祉や教育との連携が重要で、地域においては発達支援センターなどが中核となり、切れ目なく支援を継続する体制が作られつつあります。また、虐待の予防については妊娠早期からの母体のメンタルヘルスのマネジメントが重要であることが明らかになってきました。出産後に保護者の抱える「養育困難」をどうサポートしていくかが今後の課題です。

 ご自身は、滋賀医大卒業後は大学小児科へ入局、結婚、大学院へ入学、出産と順風満帆な人生を歩んでこられましたが、家人の介護、ご自身の病気と問題が生じて大学院を中退された後、小児科(発達外来)での診療に従事され、小児科学会専門医、小児精神神経学会認定医、医学博士の学位を取得され、現在は小児発達支援学講座のスタッフとして勤務されています。
 人生には色々な問題も生じますが、サポートしてもらえる職場の皆との和、お互い様という気持ちが大切とおっしゃっておられました。

 中村美智先生からは、NICU・GCU病棟勤務看護師の仕事についてお話いただきました。
 20160208_2.jpg滋賀県立総合保健専門学校卒業後、滋賀医科大学医学部附属病院に就職し、産婦人科病棟での勤務を希望されましたが、NICU(新生児特定集中治療室)・GCU(成長促進室)病棟の勤務となりました。
 当初は、赤ちゃんの小さいことにびっくりし、聞いたこともない疾患や慣れない看護技術に戸惑い、こんな特殊な部署で看護師として働けるかな?と思いましたが、勤務も6年目となります。
 ケアが予後に影響するので、赤ちゃんが出す小さなサインも見逃せず、勤務中は、常に緊張との戦いですが、小さく産まれた赤ちゃんが、日々成長していく姿や両親の笑顔が励みとなり、ここで看護師をしていて良かったと思います。
 NICU・GUC病棟の看護師は、赤ちゃんの看護だけでなく、赤ちゃんのご両親の心のケアや、赤ちゃんの退院に向けての育児指導などご家族との関わりも大切とおっしゃっておられました。

 西澤嘉四郎先生からは、小児科医の現状と小児医療供給体制についてお話いただきました。

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  • 小児科は、15歳以下の小児を対象とする診療科ですが、子供を診るだけでなく親も診る診療科です。
  • 現在、小児科医の高齢化が問題です。
  • 皮膚科、眼科、小児科では、医師の3割以上が女性医師です。
  • 滋賀県内の周産期医療体制の充実を図っているので、新生児の死亡は少なくなっています。
  • 小児救急医療は、新臨床研修制度(2004年)頃より病院で標ぼうしている小児科数が減少し小児科救急医療が難しいなか、小児科救急に関する課題を検討し小児科医療提供体制の構想を進めています。
  • 高度先進医療、臨床研究の推進に伴い、様々な新しい治療方法の開発が進められています。
  • 医療技術の進歩によって在宅での医療支援が必要な子どもや長期生存が可能となった難病の子どもは増加傾向にあり、小児科という年齢を超えた成人医療への連携と、次世代につなげる成育医療が必要になっています。

 ご自身は、滋賀医大卒業後は大学小児科へ入局後、国立立川病院で勤務された後、滋賀医科大学大学院修了後は、滋賀県内の病院小児科医として勤務されています。
 一度滋賀県外に出て働いたことで、滋賀県の良さや大学の温かみがよく判りました。色々な経験を積むことが大切とおっしゃっておられました。

 学生との懇談時に「学生が卒業までにやっておくべき事は、何ですか?」と質問した答えは、3先生とも「コミュニケーション能力を高めておくこと」でした。

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【参加学生の声】

  • 滋賀県の地域医療体制の話が興味深かった。
  • 小児科から内科への引継ぎの難しさについてもう少し聞いてみたかった。
  • NICUの赤ちゃんの小ささに驚きました。なるべく赤ちゃんは助けたい気持ちになります。しかし、助けると医療費がかかるという話も聞いたことがあり、どうすることが正解なのか・・・。
  • これまで何となく小児科に行きたいと考えていただけで、小児科がどのような勤務状況なのかといった具体的な内容を知らなかったので、そういった話を聞くことができて良かったです。また、NICUについてもどのようなものか知らなかったので、考えたことがなかったですが、少し興味を持つことができました。 今後も様々な自主講座に参加し、視野をひろげて、自分に本当に合った科はどこなのか考えていきたいと思います。
  • とてもインフォーマティブな内容で勉強になった。小児科がいかにジェネラルな科であるかがよくわかった。少子化と小児科の関わりについても聞きたかった。
  • 小児科医は、子どもだけでなく、家族(親)までしっかりみて支えていくことが求められるのだということがよく分かりました。また、患者さん及びその家族を支えるのには、いろいろな職種の協力が欠かせないのも再確認しました。やっぱり大切なのはコミュニケーション力なのですね。
  • 大変勉強になりました。特に阪上先生のご専門は興味を持っている分野でもあり、女性医師ならではの難しさについてもうかがうことができ嬉しかったです。
  • 小児科でみた患者さんを大人になってからもみていくのは大変だなと思いました。小児が専門なのに成人患者を診察するのは矛盾しているなと感じました。
  • こじんまりとした会で、現場でご活躍されている現役の先生方のお話を伺うことができ、自分の将来を考えるすごく貴重な経験になりました。ぜひまた参加させていただきたいです。
  • 講座どうもありがとうございます。現役医療において、社会面や医学面などの小児科という分野を知ることができてとてもよかったです。
  • 単純に子どもが好きだからという理由で参加しましたが、より興味を持つようになりました。
  • 子どもの発達について興味があり、今回のお話をうかがえてとても良かったです。

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